新しい全日本吹奏楽コンクールを考える①
支部大会の解説動画を作成していていつも思うのが
「この支部の代表枠、少なくね?」
まぁ、四国とかは1998年以降全国大会で金賞から遠ざかっていて、さらに銅賞の占める割合が多いから代表枠2つなのも仕方ないと思うんだけど
高校の部における、過去の全国大会の出場校数を確認
■第31回(1983)~第42回(1994)27団体
[~1989が昭和、1989~が平成]
■第43回(1995)~第62回(2014)29団体
[平成]【1995~関東が東関東/西関東の区分に】【1996~前半/後半の二部制】
※2014年以降は三出休み制度なし(2013年が最後のお休み有)
■第63回(2015)~現在(2023)
30団体 [2019~令和]
ほら、概ね時代の移り変わりとともに変化があるし、令和になった今が色々考え直す良い機会!
第30回(1982)までは25団体とかでさすがに古すぎるので、丁度40年前の区切りで第31回以降について、各支部の代表枠の推移をチェック。
ここ40年間の代表枠の推移
■北海道 ずっと2枠
■東北 ずっと3枠
■関東 ※以前は”東京以外の関東”から4枠
(後述する課題点A)東関東 ずっと3枠
(後述する課題点B)西関東 ずっと3枠
■東京 基本2枠
(※2012、2015~19が3枠)
■東海 ずっと3枠
■北陸 ずっと2枠
■関西 ずっと3枠
■中国 基本3枠(※2012だけ2枠)
■四国 ずっと2枠
■九州 以前は3枠、2021~は4枠
2012年に関しては、東京が3枠になったあおりを食らう形で中国が2枠に減少。
どっちも支部大会自体の出場校数は変動無いのに、数合わせっぽい中国支部かわいそう。
2021年からは東京が2枠に減った分、九州が4枠に。
今年(2023)も同様の支部代表枠数です。
結論から言えば、
・関東地区を中心に区分を再度考え直す
・代表枠を増やして日程を二日間にする
これが、現状でベストと考えられる吹奏楽コンクールの目指す形ではないでしょうか。
もうちょっと詳しく見てみる。
ここからは全国大会会場が普門館から名古屋に移転した2012年以降を参照
(2021年に関してはおそらくコロナの影響で、出場校が例年より数校減少している支部があるのでサンプル外)
2012年以降の支部大会→全国大会出場割合
■北海道 ずっと2枠
支部大会出場校は18~22校
平均9.6校に1校が全国出場
■東北 ずっと3枠
支部大会出場校は基本24校、25校が一度
平均8校に1校が全国出場
■東関東
支部大会出場校は24校
平均8校に1校が全国出場
■西関東
支部大会出場校は22校
平均7.3校に1校が全国出場
■東京
支部大会出場校は12校
平均6校に1校が全国出場
■東海
支部大会出場校は20校
平均6.7校に1校が全国出場
■北陸
支部大会出場校は13~17校
平均7.7校に1校が全国出場
■関西
支部大会出場校は24~22校
平均7.5校に1校が全国出場
■中国
支部大会出場校は21校
平均7校に1校が全国出場
■四国
支部大会出場校は14~17校
平均7.8校に1校が全国出場
■九州
支部大会出場校は26~28校
平均6.6校に1校が全国出場
こうやってみると以前は東京から3枠あったのは、割合としても4校に1校が全国に行けると考えれば、甘い基準だったように感じます。
一方、九州の代表枠が増えたことに関しては、吹連として
”8校に1校の割合で支部代表は厳しい→平均7校に1校くらいがバランスとしては丁度良い”
と考えての変更でしょうか。
となると、今度は北海道・東北・東関東支部では全国出場のハードルが高いように感じます。なおさら東関東なんて超激戦区なのにこれはシンドい。
大体6~7校に1校の割合で枠が決まるとすれば、支部が今の区分のままなら
北海道・東北・東関東が1枠ずつ増えた、これがベストになるはずです。
東関東と東京が割合として6校に1校でハードルが低く、一番キツいのは四国の7.8校に1校。次いで北陸が7.7校に1校、関西が7.5校に1校。
上手いバンドならたくさん出たほうが聴く方も嬉しい!のは勿論なので、支部によってはもう1個枠を増やして、合計で40校くらいになるのも悪くない。
高校野球の21世紀枠みたいに、推薦団体なんかがあるのもいいかも。
実質埼玉支部になっている西関東なんてまさにそれ。
勿論、それだけの団体数になると一日での開催は実質不可能になるでしょう。
今だって朝9時に始まって演奏が全部終わるの17時とか18時とかだし。
それでいて出演順朝一のバンドなんて、夜中に起きて明け方の3時とか4時から練習して本番に向かう訳なんだから、そんなの高校生のあるべき姿では無い。
20団体ずつ二日間に日程を分けて考えてみよう
・朝一の演奏開始時間を11時に設定
・進行に余裕が生まれるのでステージ上でのチューニング可能
現状では進行表上でのステージ時間が16分間なのを、18分に増やす
・10番目の演奏終了は14時、そこから1時間休憩
審査員には少し遅いランチタイムで我慢してもらう。特別な一日の特別な仕事なんで仕方ない。どうせ外に食いに行く訳じゃなくて出前の弁当なんだし、今の時代昼飯の時間が遅くなるなんて何も珍しいことじゃない
・一日目第二部開始が15時、全団体終了は18時
・19時表彰式開始
上に書いた以外で二日間開催にするメリットとしては、バラけたことによる開催地域での経済効果。二日間にしても満席レベルの集客は変わらないだろうし、先生たち関係者と打ち上げするでしょ?w
それと、混雑の緩和など。参加する学校も聴衆もホテルが取れないとか、練習会場が無いとかが多少解消されるのでは。
そもそも、朝一団体の負担減少とチューニング可能になる2つのメリットはかなり大きいはず。
デメリットとして考えられるのは、まずは開催補助にあたる運営側の負担。
これは地元の中高生ならび吹奏楽を愛する市民に頑張ってもらおう。
個人的にはこれに関してもボランティア制ではなくて、多少なりとも報酬を発生させても良いと思う。(もちろん、中高生に関しては報酬という訳には行かないだろうから、大学生や大人に限った話だけど)
そして必ず出そうな意見が、審査の公平性。
これは、二日間でそれぞれ異なる審査員でも問題ないと思うの。
そもそも現状でも審査員の好みというものがどうしても存在してしまう以上、公平性を理由に挙げるのはナンセンスだ。
むしろ、開催自体が連続する土日の二日間じゃなくて、会場だって二箇所に分かれてもいいと思う。北海道の学校が名古屋まで遠征するなら九州の学校が宮城まで遠征することがあってもいいじゃない。
さすがに東日本会場/西日本会場とエリア毎に分けてしてしまうのは、東北や九州の音楽性の違いを楽しめなくなってしまって残念なので、東北の学校なのに会場が西日本だったり、四国の学校なのに会場が西日本だったり、それはそれでクジ運でも面白いと思う。
演奏中が9時からの30団体中一番目になってしまうクジ運の悪さよりは全然マシ。
これに併せて、金銀銅の順位制度も将来的には廃止。
でもゴールド金賞はやっぱり青春を吹奏楽に費やした高校生の目標でもあるのは事実なので、上位8~10校くらいまでは金賞。あとは参加賞みたいな。
そもそも「金賞=良し」という概念以上に問題なのが「銅賞=ダメだった」という概念が存在していること。銀賞ならまぁ普通だったのかなってイメージは誰しもが持つけど、銅賞だと「全国まで行ったのに下手だった」という考えがあるのも事実。(そんなことは絶対に無いんだけど。)
そして1位~3位くらいなら順位を付けてしまうのも悪くはないと思う。
音楽に順位をつけるのは音楽教育上良くないという意見が多いのも理解はしているけど、個人的には高校生でコンクールに参加した経験というのは”高校三年間の音楽生活”という側面以上に、その後の人生にもプラスになるほうが多いと感じる。
コンクールとは何か。それが音楽教育の一つであるなら、金銀銅やたくさんの練習時間は確かに良くないものかもしれない。
でも、それが”その後の人生に多大な影響を与える、青春時代に打ち込んだモノ”になるはずなので、金銀銅やたくさんの練習時間も決して時代に逆行してるような悪者にはならないと思うんだけどな。
それでもブラック部活だという意見は多いと思うけど、それって吹奏楽やコンクールが悪い訳じゃなくて、指導者だったり親だったり、大人側に問題があるだけの話では。
金賞至上主義を改善させるために金賞の制度を廃止するのではなく、少しでも多くの学校に金賞に遭遇できる機会を与えるほうが良いのではと自分は感じます。
そもそも県大会クラスでは上手いバンドとそうじゃないバンドの差は歴然で、上位大会に行くほどその差が狭くなるのが一般的。
”次のクラスが存在しない”という意味では、やはり支部大会から全国大会への出場が、一般的な実力校では目標になると思います。
そうなると、全国大会での賞の色に限らず、”前年に全国大会に進んでいる学校”が経験も積んでいる分、必然的に強いはずです。
つまり全国大会の出場枠を増やすことで、良い経験ができるバンドが今よりも増えるという結論に、個人の見解としては至るわけです。
まぁ、コンクールの賞制度について語るのは炎上の元にもなりそうなので、これはあくまで一個人の意見です。全く異なる考えがあるのも当然だし、どっちが正解とかは無いと思います。
でも、もし現状のままのコンクールがこのあと何年も続くのであれば。
様々な課題点さえ解消されるなら、日程を増やして出場団体を増やすのは決して悪い意見ではないというのは誰しもが想像しやすいと思います。
勿論、「出場団体を増やす=日程が増える」はセットで考える必要があるけど。
さて、少しでもたくさんの学校に全国大会出場を叶えてほしい。
そう考えたときに誰しもが気づくのは、現状では不毛の地と言わざるを得ない県が多いこと。
東北だと青森や岩手、それ以外では栃木・新潟・群馬・山梨・三重・岐阜・長野・滋賀・和歌山・広島・鳥取・徳島・佐賀・宮崎・大分。ざっとこのあたりなんかは全国大会とはここ数年ほぼ無縁です。九州や四国、関西あたりは上ほうでチラッと書いた「21世紀枠」でなんとかなるとして、問題なのはお世辞にも現在の区分が適切に感じられない関東甲信越エリアでしょう。
長くなってきたので、続きは「新しい全日本吹奏楽コンクールを考える②」で、そのうち…。